7/23(水)
補充二日目。
今日も先生たちは来ないっぽい。
だからみんなでワイワイと答えを写した。
クラスの女子は千歳しかいない。
その千歳は国語だけだから、とにかくさっさと帰っていった。
ワコは三教科だからどうしても遅くなる。
結局最後は須田と行動をともにした。
というか補充のほとんど男子だし。
っていうかもともと深山高校は男子のほうが多いし。
「鎌田、俺、付き合うよ。」
「え、いいよ。」
須田はワコの答えを丸写し(>_<)した後、国語の補充はないのに一緒にずっと最後まで付き合ってくれる。なんで写したやつのほうが早く終わるんだ、という文句を言うのはやめておいた。
「ねえ、お昼ご飯、コンビニのパンとかどう?」
「え?別にいいけど。」
家に帰っても特に用事があるわけでもないから、付き合った。
「俺とワコっていっぱい一緒に歌うだろ。音楽室でちょっと歌わない?」
「いいけど、熱心だね。」
先生に許可をもらってエアコン、ON!
「うわ、ここで宿題やったら最高だね。貸切りだ。」
「明日もやろうよ、宿題持ってこれば?」
ん?
補充二日目。
今日も先生たちは来ないっぽい。
だからみんなでワイワイと答えを写した。
クラスの女子は千歳しかいない。
その千歳は国語だけだから、とにかくさっさと帰っていった。
ワコは三教科だからどうしても遅くなる。
結局最後は須田と行動をともにした。
というか補充のほとんど男子だし。
っていうかもともと深山高校は男子のほうが多いし。
「鎌田、俺、付き合うよ。」
「え、いいよ。」
須田はワコの答えを丸写し(>_<)した後、国語の補充はないのに一緒にずっと最後まで付き合ってくれる。なんで写したやつのほうが早く終わるんだ、という文句を言うのはやめておいた。
「ねえ、お昼ご飯、コンビニのパンとかどう?」
「え?別にいいけど。」
家に帰っても特に用事があるわけでもないから、付き合った。
「俺とワコっていっぱい一緒に歌うだろ。音楽室でちょっと歌わない?」
「いいけど、熱心だね。」
先生に許可をもらってエアコン、ON!
「うわ、ここで宿題やったら最高だね。貸切りだ。」
「明日もやろうよ、宿題持ってこれば?」
ん?
このお姫様、実はパパゲーノと行動することが多い。
「ワコは音楽に進まないの?」
「あんまり考えていないよ。須田君は進むの?」
「うん、芸大狙ってるよ。」
うわ、マジですか。
「ダメでも音大には進む。」
「あ、そうなんだ。音楽好きなんだね。」
「俺、安東先生の弟子。」
ああ、そうだった。音楽学院の常勤唯一の男の先生。
「でも須田って音楽学院の生徒じゃないよね。」
「俺、聖歌隊のメンバー。」
安東先生は教会付属の聖歌隊の指導もしている。
「ってことはクリスチャン?」
「父と母はね。俺はまだ決めてない。」
「ふーん。須田君って一人っ子?」
「姉がいるよ。姉もクリスチャンになるかどうかはまだ決めていない。高校卒業してもう働いている。」
「ふーん。じゃあ音大や芸大に行くのに、お金の心配はあんまりないんだ。」
「なに、お金の心配をしているの?」
「本当に音楽を目指したら、バイトとかしてられないよ。レッスンに払うお金も膨大だし。」
「なんとかなると思うよ。そんな心配しなくても。」
「だって東京でお風呂とかないアパートで暮らすの?」
お風呂がない、というところで須田が吹き出した。
「妙なところはリアルに想像できるんだね。名古屋の音大なら家から通えるじゃないか。芸大や東京に行かなきゃ音楽ができないわけじゃないよ。」
「じゃあ、須田は名古屋の音大?」
「芸大は受けるけれど、その他は全部名古屋の大学を受けるよ。それに音大でなくたって、教育学部の音楽科は?」
「そっちこそリアルな設定だね。」
二人で笑ってしまった。
「須田は声楽科?」
「うん、鎌田は?」
「いや、だから、音楽かどうかも。」
「君、ピアノも上手いんだろ?歌かピアノ、選ぶのも大変か。」
「いやいや、だから・・・」
「じゃあ、音楽以外ならどうするの?」
「いや、だから、その・・・」
須田はなんでこんなことを聞くんだろう。
「ワコ、大きくなったら何になりたいの。」
大きくなったらって、もう結構大きいですがな(-_-)
「あんまり、ないんだよね。そういう夢。」
「あんまりってことは、少しはあるんでしょ。」
「ん? まあね。」
「何? その夢。」
ちょっとためらうなあ。でも須田は聞くまで黙りそうもない。
「ん? お嫁さん。」
須田はちょっと吹き出した。
「じゃあどうして深山高校なんてきたのさ。お嫁さんならそれこそ百瀬にいればよかったじゃないか。社長の息子がいっぱいいるんだろ? 高校卒業と同時に結婚とかさあ、短大だけは出るとかさあ。」
別にどこの高校へ行こうと勝手だろうが。
「あ、ごめん。その、どの高校に進学するかなんて、人につべこべ言われることじゃないね。それに君がここに来なければ、僕は君に会えなかったわけだし。」
なんとなく照れてしまったけれど、無視して二人で歌うことにした。
「本当に綺麗だよね、ワコの声って。優子先生や甲斐先生が君を使うのにこだわるわけだ。けれど、何と言うか、伝わってこないね。無機質なときに使いたい声だな。」
「無機質って?」
「例えば映画のムードを出したいとき。音楽に感情とかがこもっていてほしくないときあるじゃん? 淡々とやることによって、かえって込み上げてくるものがある、というかさ、それ以上ムードあげるとかえってしらけるとかさ。」
なんとなく分かるけれど。
「何も考えていない子どもの声って感動するじゃん、あんな感じ。」
ワコがガキだと言いたいのかな。
「俺、演技するからさ、『魔笛』、付いてきてくれないと寂しいな。」
「舞台、慣れているの?」
「慣れているさ。毎年最低でも三回は演劇の舞台にも立ってきたから。」
「劇団に入っているの?」
「教会の降誕劇と学校の演劇部の文化祭と地区大会。これでも三年のときには全国大会まで行ったんだよ。『アニー』も出るし『アン』は君をいじめるフィリップス先生役だよ? 分かってる?」
「へーえ。」 知らんかった(^^ゞ
「ワコは? 『アン』はやったことがあるって聞いたよ。」
「ん? まあね。」
「それにしては感情移入が苦手?」
「さあ。考えたことないもの。」
「でもワコって国語が得意なんだから、理解力はあるということ? 表現力がない?」
須田は一人でブツブツ言い始めた。
ナンなんだよ、一体。
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「ワコは音楽に進まないの?」
「あんまり考えていないよ。須田君は進むの?」
「うん、芸大狙ってるよ。」
うわ、マジですか。
「ダメでも音大には進む。」
「あ、そうなんだ。音楽好きなんだね。」
「俺、安東先生の弟子。」
ああ、そうだった。音楽学院の常勤唯一の男の先生。
「でも須田って音楽学院の生徒じゃないよね。」
「俺、聖歌隊のメンバー。」
安東先生は教会付属の聖歌隊の指導もしている。
「ってことはクリスチャン?」
「父と母はね。俺はまだ決めてない。」
「ふーん。須田君って一人っ子?」
「姉がいるよ。姉もクリスチャンになるかどうかはまだ決めていない。高校卒業してもう働いている。」
「ふーん。じゃあ音大や芸大に行くのに、お金の心配はあんまりないんだ。」
「なに、お金の心配をしているの?」
「本当に音楽を目指したら、バイトとかしてられないよ。レッスンに払うお金も膨大だし。」
「なんとかなると思うよ。そんな心配しなくても。」
「だって東京でお風呂とかないアパートで暮らすの?」
お風呂がない、というところで須田が吹き出した。
「妙なところはリアルに想像できるんだね。名古屋の音大なら家から通えるじゃないか。芸大や東京に行かなきゃ音楽ができないわけじゃないよ。」
「じゃあ、須田は名古屋の音大?」
「芸大は受けるけれど、その他は全部名古屋の大学を受けるよ。それに音大でなくたって、教育学部の音楽科は?」
「そっちこそリアルな設定だね。」
二人で笑ってしまった。
「須田は声楽科?」
「うん、鎌田は?」
「いや、だから、音楽かどうかも。」
「君、ピアノも上手いんだろ?歌かピアノ、選ぶのも大変か。」
「いやいや、だから・・・」
「じゃあ、音楽以外ならどうするの?」
「いや、だから、その・・・」
須田はなんでこんなことを聞くんだろう。
「ワコ、大きくなったら何になりたいの。」
大きくなったらって、もう結構大きいですがな(-_-)
「あんまり、ないんだよね。そういう夢。」
「あんまりってことは、少しはあるんでしょ。」
「ん? まあね。」
「何? その夢。」
ちょっとためらうなあ。でも須田は聞くまで黙りそうもない。
「ん? お嫁さん。」
須田はちょっと吹き出した。
「じゃあどうして深山高校なんてきたのさ。お嫁さんならそれこそ百瀬にいればよかったじゃないか。社長の息子がいっぱいいるんだろ? 高校卒業と同時に結婚とかさあ、短大だけは出るとかさあ。」
別にどこの高校へ行こうと勝手だろうが。
「あ、ごめん。その、どの高校に進学するかなんて、人につべこべ言われることじゃないね。それに君がここに来なければ、僕は君に会えなかったわけだし。」
なんとなく照れてしまったけれど、無視して二人で歌うことにした。
「本当に綺麗だよね、ワコの声って。優子先生や甲斐先生が君を使うのにこだわるわけだ。けれど、何と言うか、伝わってこないね。無機質なときに使いたい声だな。」
「無機質って?」
「例えば映画のムードを出したいとき。音楽に感情とかがこもっていてほしくないときあるじゃん? 淡々とやることによって、かえって込み上げてくるものがある、というかさ、それ以上ムードあげるとかえってしらけるとかさ。」
なんとなく分かるけれど。
「何も考えていない子どもの声って感動するじゃん、あんな感じ。」
ワコがガキだと言いたいのかな。
「俺、演技するからさ、『魔笛』、付いてきてくれないと寂しいな。」
「舞台、慣れているの?」
「慣れているさ。毎年最低でも三回は演劇の舞台にも立ってきたから。」
「劇団に入っているの?」
「教会の降誕劇と学校の演劇部の文化祭と地区大会。これでも三年のときには全国大会まで行ったんだよ。『アニー』も出るし『アン』は君をいじめるフィリップス先生役だよ? 分かってる?」
「へーえ。」 知らんかった(^^ゞ
「ワコは? 『アン』はやったことがあるって聞いたよ。」
「ん? まあね。」
「それにしては感情移入が苦手?」
「さあ。考えたことないもの。」
「でもワコって国語が得意なんだから、理解力はあるということ? 表現力がない?」
須田は一人でブツブツ言い始めた。
ナンなんだよ、一体。
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