センセ、絶好調!!   (小説です(^^ゞ)

夏休み、開始!
 7/22(火)

 いよいよ暑い夏の補充が始まった。
 なんて嫌な響きなんだ(>_<)!


「よお、鎌田、お前も?」


 げ、須田と町田!


「8組はこの3人?」
「いや、千歳が国語だけ。」
「鎌田は?俺は英語と数学。」と須田。
「俺は英語。」と町田。


 (-_-)


「ねえってば。」


 (-_-)(-_-)


「英語?」
「数学?」
「ワコは全部よ。」


 げっ! 千歳ちゃん・・・<(`^´)>
 町田と須田は顔を見合わせる。


「え、全部って国語も?」
「そうだけど?」
「お前って学年トップしゃなかったっけ。」
「そうだけど?」
「なんで?」
「漢字テスト全部不合格。」と千歳が言った。
「ああ(^^ゞ」
「ああ(^^ゞ」




 納得するな!




 初日はどの教科の子も、複数教科の子も全員9時視聴覚教室集合。
 なんでだろうと思っていたら、どの教科もプリントをやればいいだけで一斉授業ではなかったから。
 自分で答え合わせをして間違っているところを直したら提出しておしまい。
 条件は10時までに開始することと、午前中に終わらせることの二点だけだという。
 補習組の子はきちんと授業をしているらしいから、補充組のほうが楽じゃん?
 やり終わったプリントは担当の先生の机まで持っていくことになっている。
 でも英語も国語も数学も、先生たちは補習授業でいないもんね。
 だから誰にも嫌味を言われることもなく帰宅。


 なーんだ、楽じゃん(*^_^*)



 
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須田君と
 7/23(水)


 補充二日目。

 今日も先生たちは来ないっぽい。
 だからみんなでワイワイと答えを写した。
 クラスの女子は千歳しかいない。
 その千歳は国語だけだから、とにかくさっさと帰っていった。
 ワコは三教科だからどうしても遅くなる。
 結局最後は須田と行動をともにした。
 というか補充のほとんど男子だし。
 っていうかもともと深山高校は男子のほうが多いし。

「鎌田、俺、付き合うよ。」
「え、いいよ。」

 須田はワコの答えを丸写し(>_<)した後、国語の補充はないのに一緒にずっと最後まで付き合ってくれる。なんで写したやつのほうが早く終わるんだ、という文句を言うのはやめておいた。

「ねえ、お昼ご飯、コンビニのパンとかどう?」
「え?別にいいけど。」

 家に帰っても特に用事があるわけでもないから、付き合った。
「俺とワコっていっぱい一緒に歌うだろ。音楽室でちょっと歌わない?」
「いいけど、熱心だね。」


 先生に許可をもらってエアコン、ON!


「うわ、ここで宿題やったら最高だね。貸切りだ。」
「明日もやろうよ、宿題持ってこれば?」


 ん?






ワコの夢はお嫁さん
 このお姫様、実はパパゲーノと行動することが多い。

「ワコは音楽に進まないの?」
「あんまり考えていないよ。須田君は進むの?」
「うん、芸大狙ってるよ。」

 うわ、マジですか。

「ダメでも音大には進む。」
「あ、そうなんだ。音楽好きなんだね。」
「俺、安東先生の弟子。」

 ああ、そうだった。音楽学院の常勤唯一の男の先生。

「でも須田って音楽学院の生徒じゃないよね。」
「俺、聖歌隊のメンバー。」

 安東先生は教会付属の聖歌隊の指導もしている。

「ってことはクリスチャン?」
「父と母はね。俺はまだ決めてない。」

「ふーん。須田君って一人っ子?」
「姉がいるよ。姉もクリスチャンになるかどうかはまだ決めていない。高校卒業してもう働いている。」

「ふーん。じゃあ音大や芸大に行くのに、お金の心配はあんまりないんだ。」

「なに、お金の心配をしているの?」

「本当に音楽を目指したら、バイトとかしてられないよ。レッスンに払うお金も膨大だし。」

「なんとかなると思うよ。そんな心配しなくても。」

「だって東京でお風呂とかないアパートで暮らすの?」



 お風呂がない、というところで須田が吹き出した。



「妙なところはリアルに想像できるんだね。名古屋の音大なら家から通えるじゃないか。芸大や東京に行かなきゃ音楽ができないわけじゃないよ。」
「じゃあ、須田は名古屋の音大?」

「芸大は受けるけれど、その他は全部名古屋の大学を受けるよ。それに音大でなくたって、教育学部の音楽科は?」
「そっちこそリアルな設定だね。」



 二人で笑ってしまった。



「須田は声楽科?」
「うん、鎌田は?」
「いや、だから、音楽かどうかも。」
「君、ピアノも上手いんだろ?歌かピアノ、選ぶのも大変か。」
「いやいや、だから・・・」
「じゃあ、音楽以外ならどうするの?」
「いや、だから、その・・・」



 須田はなんでこんなことを聞くんだろう。



「ワコ、大きくなったら何になりたいの。」



 大きくなったらって、もう結構大きいですがな(-_-)



「あんまり、ないんだよね。そういう夢。」
「あんまりってことは、少しはあるんでしょ。」
「ん? まあね。」
「何? その夢。」


 ちょっとためらうなあ。でも須田は聞くまで黙りそうもない。


「ん? お嫁さん。」


 須田はちょっと吹き出した。


「じゃあどうして深山高校なんてきたのさ。お嫁さんならそれこそ百瀬にいればよかったじゃないか。社長の息子がいっぱいいるんだろ? 高校卒業と同時に結婚とかさあ、短大だけは出るとかさあ。」


 別にどこの高校へ行こうと勝手だろうが。


「あ、ごめん。その、どの高校に進学するかなんて、人につべこべ言われることじゃないね。それに君がここに来なければ、僕は君に会えなかったわけだし。」


 なんとなく照れてしまったけれど、無視して二人で歌うことにした。


「本当に綺麗だよね、ワコの声って。優子先生や甲斐先生が君を使うのにこだわるわけだ。けれど、何と言うか、伝わってこないね。無機質なときに使いたい声だな。」
「無機質って?」
「例えば映画のムードを出したいとき。音楽に感情とかがこもっていてほしくないときあるじゃん? 淡々とやることによって、かえって込み上げてくるものがある、というかさ、それ以上ムードあげるとかえってしらけるとかさ。」


 なんとなく分かるけれど。


「何も考えていない子どもの声って感動するじゃん、あんな感じ。」


 ワコがガキだと言いたいのかな。


「俺、演技するからさ、『魔笛』、付いてきてくれないと寂しいな。」
「舞台、慣れているの?」
「慣れているさ。毎年最低でも三回は演劇の舞台にも立ってきたから。」
「劇団に入っているの?」
「教会の降誕劇と学校の演劇部の文化祭と地区大会。これでも三年のときには全国大会まで行ったんだよ。『アニー』も出るし『アン』は君をいじめるフィリップス先生役だよ? 分かってる?」


「へーえ。」 知らんかった(^^ゞ


「ワコは? 『アン』はやったことがあるって聞いたよ。」
「ん? まあね。」
「それにしては感情移入が苦手?」
「さあ。考えたことないもの。」
「でもワコって国語が得意なんだから、理解力はあるということ? 表現力がない?」


 須田は一人でブツブツ言い始めた。
 ナンなんだよ、一体。




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センセ、登場
 7/24(木)


 補充三日目スイカ
 みんなでワイワイ騒いでいたら、いきなり三人の先生がガラガラッと入ってきた。
 全部うちのクラスの教科担当の先生やん・・・甲斐先生と原田先生おるし・・・


 シーーーーン


 今日はどないしたん?
 漏れ聞くところによると今日は補習クラスは休みらしい。
 補充と補習の日程は一緒じゃないのか。
 先生がいるから自分でやることになるが、
 だからと言ってそれほど遅くなることもない。
 こういうところが深山の子たちだ。
 もともと勉強は出来る。
 まず千歳が帰っていった。ついで町田。
 千歳が座っていたところが空いたから、こそっと須田が移ってきた。


「見せてよ。」


 須田は勉強をやる気がないのかな。
 できている英語と数学をそっくり渡して、国語にとりかかった。
 須田は徹底的にワコのを写している。
 そんなに写すとバレますぞ?
 国語は漢字以外ができた。


「漢字は?」
「分かりません。」 教えて(*^_^*)


 甲斐先生はため息。


「教えてあげるから、裏に百回ずつ書いておいで。」


 100回(−−〆)


「・・・ちょっと多くありませんか?」
「そう? じゃあ200回にする?」
「・・・(-.-)」


 それにしても須田は全部写す気らしい。
 英語も数学も全部合っている自信は全然ないし、
 答えが埋まっていないところもある。須田はどうするのかな。

 ワコより先にプリントを仕上げて持っていった。
 間違っているところがあるらしい。
 プリントをワコに見せた。


 ゲッ・・・結構違ってる・・・


『間違えててゴメン(;´Д`A ``』ゴメンゴメン・・・
『なんで君が謝るの?』
『なんとなく・・・(;^_^A』


 お見合いしてても仕方ない。
 ワコは漢字(>_<)
 須田はプリントと睨めっこ・・・

 睨めっこ・・・

 睨めっこ・・・


『教科書とか持ってきてないの?』


 うん(-.-)


 しゃーねーなあ、全く・・・
 鞄から教科書と英語の辞書を出してやった。


『まじめだなあ』


 結構しらけた目で見てやった。


『うちら、ほやて。』


 須田は笑っていた。
 ったく、気楽でいいなあ。




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あくまでも魔笛
 須田が先にプリントを仕上げた。
 そしたらワコのプリントの間違ったところを消してくれる。


『いいよ、自分でやるから。ありがとう。』
『永遠に終わらねーぞ。』
『別にゴゴから何があるわけでもない。』
『マテキがある』


 『魔笛』と補充、どっちが大事なんだよ。
 須田は自分のプリントを持っていった。
 またなんか違ってる?
 数学を持って帰ってきた。


「どしたの?」
「ここ、分かんない、ガ━━(´Д`|||) ━━ン!」


 絶望的にしゃがみこむ。
 おいおいおい、過剰表現(^^ゞ


『使ってる公式が違ってます』


 教科書で教えてやったらさっさとプリントを終えやがった。
 この間センセと一対一で教えてもらったときに、教えてもらった問題。


「ねえ、まだ? ドベになっちゃうよ。」
「どーせ三科目だもん<(`^´)>」
「いじけんなよ。」


 もう残っている子も少ないから低い声でしゃべる。
 須田はワコの間違っているところを再び消してくれる。


「ありがと。」
「一人で『魔笛』やってもつまんないもん。」


 あくまでも『魔笛』なわけね(^^ゞ

 結局最後になって、先生たちのほうがワコたちのほうへ寄ってきた。


「随分仲良くやってたね。須田が一方的に鎌田のを見ていたときはペナルティでも課そうかと思っていたけど、結構二人で頑張っていたから許すよ。」
「須田って、何も持ってきてないんだよ。ひどくない<(`^´)>?」
「だって暑いし。辞書とか重いし。」
「それにしたって教科書くらい持ってこいよ。」


 先生たちは笑っていた。



「明日はまた俺たち来られないけれど、写しちゃダメだよ。」
「あ、忘れてた。明日、私来られない。」
「サボリ?」
「ちがいます! サボるときにわざわざ事前にサボリますとは言いません! ピアノの公開レッスンで行かないといけないんです。」
「そういえば春日もそんなことを言っていたなあ。鎌田が弾くの?」
「うん、モーツァルトのソナタだよ。ワコは第一楽章。」

 メロディーを歌った。さすがにソナタの何番とかまでは暗記していない。

「俺、それ見に行っていい?」
「俺も行きたいなあ。」
「あ、知らない。外部の人はお金を取るような話を聞いた。」
「君は仕事。」
「はーい。」

 センセは笑ったけど須田はつまらなそうな顔をした。


「というわけで明日休みまーす。よろしく。」
「月曜日、三倍ね。」



 げっ<(`^´)>!







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会えたからいいじゃん
 須田がトイレだと言って出て行った。

「それにしても鎌田は三科目ともなの?」
「英語は国語と同じで小テストの不合格のせいだよ。国語なんて学年トップのくせに、小テストだけで補充ってひどくない?」

 センセは他の2人の先生が職員室に戻った後も付き合ってくれている。

「いいじゃん、こうして会えるんだから。俺、楽しいし。お前のとぼけた顔見ると癒される。」


 と、とぼけてますか?・・・ (^^ゞ


「会えるって、まさかそのために補充に入れたの?」


 甲斐先生が見下した涼しい顔になった。


「残念だけれどそんな操作をしなくても、漢字テスト全部不合格だからね。間違いなく補充組。」


 あ、そうですか。すんませんね!



「会えたからいいじゃん。」

 会えたから・・・ほわん(*^_^*)



「会えたからって、先生が補充に来たのは今日が初めてじゃん<(`^´)>」

「補習の授業で抜けられなくってさ。寂しかった?」

「はっ!? そんなわけないでしょ。昨日までは先生がいなかったから、みんなでワイワイやっていて楽しかった。」

「答え、写していたでしょ。」

「ん? そんなことないよ(^^ゞ」

 いかん、嘘は苦手なのだ。先生が笑っていた。





「先生って今日時間ありませんか?」

 須田が元気に飛び込んできた。

「俺たちこれから『魔笛』をやるんです。一緒に付き合ってくれませんか?」
「いいよ、今日は暇。」

 だから須田と二人でコンビニに行って、お昼ご飯を買って資料室へ行ったのだ。

「先生、須田って私より数学苦手みたいだよ。」
「須田、そりゃ、マジでやばいよ。」
「先生、それってどういう意味ですか<(`^´)>」自分でツッコミだ。
「ん?そのままの意味だよ。」

 あ、そ<(`^´)>!





 須田と先生とワコが出てくる歌、と言えば、ワコが襲われる歌(-_-)から。
「最初、俺が鎌田を追い詰めるようにして入っていけばいい? で、俺がお前の上から覆いかぶさるから、鎌田は仰け反って、そのままソファに倒れてね。」

「はーい。」


 適当に椅子を置いてソファのかわり。
 須田には衝立の後ろのソファは使わせないということなのか?
 襲われる歌だからちょっと緊張したけれど、須田がいる前でぶっ倒れるわけにはいかないし、すごくいい加減に演技したけれど、先生も須田も二人のところの練習をやってくれて、ワコは歌う必要がほとんどなかった。
 ワコが気絶している間、二人はお互いにお互いをお化けだと思って逃げたす場面。二人は正確に音取りをした後、コミカルな演技に仕上げた。


「須田君って歌だけじゃなくって演技も上手いんだ。」
「そ、そう?」


 ワコ、この二人についていかないといけないのか・・・大丈夫かな・・・





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夢みたい
「ねえ、聞いていい? どうして須田君って深山高校に来たの? 音楽科に行けばよかったんじゃない?」

「百瀬の音楽科とか?」

「いや、白谷もあるよ。」

「白谷は遠いし、私立はお金かかるでしょ。」

「だったらもう少しレベルの低い公立高校行って、もっと音楽の勉強を頑張っちゃうとか考えなかったの?」

「どこの高校へ行こうとその子の勝手でしょ。鎌田だって以前司馬にそんなようなことでつっかかっていたことがあるじゃないか。」


 衝立の後ろから矢部先生が出てきた。


「うわあ。いたんだ。」


 矢部先生が昼寝をしていたからソファを使わなかったのか。


「いたんだ、ってお前さあ、先生に向かってそういう口の利き方? こういう時は甲斐君のスパルタ躾の信奉者になっちゃうよ。」と矢部センセ。

「お昼寝をなさっていらっしゃってたんですね、こんな大音量の中で。」

「嫌味かよ。」矢部先生は大きな欠伸をした。




「君たちが深山を受けると聞いたからだよ。」 須田がボソッと呟いた。




 君たち?




「君と広瀬。」

「え?」

「音楽学院のクリスマスコンサート、僕は何度か忍び込んだことがあるんだ。安東先生が入れてくれた。」


 いつだったか、どうして須田がワコの歌を聴いたことがあるんだろうと思ったことがあったのを思い出した。


「二年前のクリスマスコンサート、君がアメージンググレイス歌って、広瀬がショパンの『雨だれ』を弾いただろ。安東先生が君たちを絶賛していたんだ。君たちが深山を受けるからって俺にも勧めてくれた。音楽に造詣の深い友達がいるのはいいことだよって。だから半年、死に物狂いで勉強した。」


 いつものおちゃらけた陽気な須田の顔ではない。


「その・・・、音楽学院で習うとか・・・」

「安東先生は何度も勧めてくれた。でもね、ワコ、音楽学院の授業料は僕の家では払えないんだ。君はたまに広瀬に金持ちでいいねって言っているけれど、僕からしてみれば、君も十分金持ちの家の子なんだ。」

「あ、あたし、一人っ子だから・・・あたし一人にお金かけれるし。」

「そういうことも大きいよね。」


 うちは金持ちではないんだよ、本当に。
 でもそれは須田にとってそれは嘘になるんだよね、きっと。
 だから黙っていた。

 実際、音楽学院の授業料は高い。
 ワコもそれは気にしている。
 ワコの家もただの公務員だから。
 一人っ子でなければ、多分通わせてはもらえていない。
 どうしよう。先生たちも神妙な顔つきだ。


「安東先生は俺にタダで時々ピアノを教えてくれるよ。でも家にピアノないから。」


 ますます答えられなくなった。


「別にひがんでいるつもりはない。おかげで俺は君と違って歌でやっていこうという明確な目標が持てているんだと思う。君は歌かピアノかすら決められないんだろ?」


 昨日の話か。


「だから、音楽へ進むとは、」
「余裕があるからそんなことを言っていられるんだよ。」


 どうしよう。なんだか責められているような気がしてきた。
 それに須田の言っていることは真実のような気がしてくる。
 ワコは最後は誰かのお嫁さんになればいいと思っている部分がある。
 ママのように、誰かのお嫁さんになって、もし必要だったり、暇な時間があるのなら働けばいい、それくらいにしか思っていない。これって余裕があるからなのだろうか。


「深山に来て、君や広瀬と同じクラスだと知ったときの俺の興奮、分かる? 春日さんも青木さんも。すごく嬉しかったんだ。」
「そうだね。みんななぜだか、同じクラスだし。」
「みんなで『魔笛』だって。『アニー』も。俺には夢みたいなんだ。」


 夢みたいか。


 夢・・・か・・・





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笑い声が好き
「須田君は『アニー』では何をやるの?」
「ルースター。意地悪な役なんだよ。」
「パパゲーノもそっちも、癖のある役だね。」
「性格が屈折しているからね。広瀬みたいに素直に王子様なんてできないよ。」


 なんとなく、反感を持ってしまった。


「・・・広瀬だってすんなりここまで来たわけではないよ。」



 なんとなく広瀬を庇ってしまった自分に驚いた。
 須田は怪訝な顔をしている。



「あまり仲がよくないのかと思うことも多かったけれど、やっぱ仲はいいんだ。」
「え、まあ、その・・・基本、仲はよくないよ。」



 須田はその言葉を聞いて微笑んだような気がした。



「先生はどうして音楽へ進まなかったのですか?」

 ああ、そうだ、どうして先生は音楽の道へ進まなかったのだろう。

「俺?」



 急に話しをふられた先生が素っ頓狂な声をあげた。



「うん。センセ、とっても上手いし。どうして国語の先生なの?」



「俺の恩師が国語の教師だったからだよ。俺がここまでこれたのに、1人の教師が深く関わってくれている。その人が、俺には国語の力があるって言ってくれたからだよ。」



 ふーーん。



「それから音楽については、俺にはそういう選択は許されなかったからだよ。それに当時は自分が音楽や演劇が好きだという自覚もなかったし。去年久しぶりにここの学校祭で『マイ・フェア・レディー』をやって、初めて舞台がこんなに楽しいものなのかと再認識した次第です。」



 先生が須田に丁寧に答えているのが面白かった。



「去年は何の役をやられたんですか?」
「ヒギンズ教授だよ。三年の子がやるはずだったんだけれど、直前に彼女にふられてボロボロになっちゃってさ。急遽代役。」
「見たかったなあ。」
「急遽の代役だから、見られたもんじゃないよ。」

「どんな話なの?」



 ワコはその話を知らない。



「とんでもないお転婆娘をお嬢さんに仕立てあげる話だよ。君を一流のお嬢様に仕上げるような話。口をこうやって掴んで、」



 先生が迫ってきた。



「ウワッ、やめろって、痛いッ<(`^´)>!」
「ほら、その言葉を直すの(*^_^*) お前とだったら何の演技もナシに、地で『マイ・フェア・レディー』ができそうだな、あはは」




 痛いって、放せ、バカ野郎!!



 須田と矢部先生がセンセにつられて笑ってた。
 ワコ、笑い声が好きだ。
 
 痛いのは、ヤだけど(>_<)




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それって泊まれってことですか
 7/25(金)


 本日は琴音と一緒にピアノの公開レッスンの生徒。
 先生はイタリア人で、いちいち通訳が入るけれど音楽に言葉はいらないよね。
 お手本の通りに弾くと大げさに何か言っている。
 笑っているからいいんだろう。


 自分の順番は終わった。
 今頃学校では補充。
 監督の先生誰だろう・・・
 甲斐センセでないといいな。
 甲斐センセ、元気かなあ。



 明日は伊藤先輩の誕生日パーティー。
 広瀬ママから電話がかかってきた。



『帰りが遅くなるからひょっとしたら広瀬家でワコちゃんをお預かりいたします。』


 それって泊まれってことですか?

 はぁぁ、どうも・・・
 預かられ物、ワコ。




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あんたの好きなのは、高校の先生でしょ?
 7/26(土) 今週の『魔笛』は明日の日曜だって。



 今日は葵先輩の誕生日パーティークラッカー
 広瀬と一緒に来いと言われている。
 広瀬のパートナーはあまり気がすすまないと告げたら、自分もパートナーが気に入らないから交換しようと言われている。そんなことしていいのかな。広瀬が衣装をもって迎えに来てくれた。


「小父様、小母様、お久しぶりです。」

 本当に広瀬はソツがない。


「いやあ、中学のときにはワコが大変世話になったねえ。高校でも色々と世話になっているようだし、今日は悪いね、衣装をそろえてくれたって?」と満面の笑みの父。


「姉のです。姉はワコちゃんが好きなので、この衣装はそのまま差し上げてほしいそうです。お古で悪いけれど。伊藤先輩の家に集まる人のところには、このドレスは着ていっていないらしいよ。そういうことで選んだから黄色になっちゃった。」


 細かいお心遣い、ありがとうございます。


「どうやら僕たちだけが学生で学校の友達はいないみたいなんです。同年代のお友達方は今日の昼間にすませたようなんです。夜は大人中心らしくて。どうして僕たちが夜の方に招待されたのか不思議なんですけどね。でもメインのパーティーは夜で、僕たちは正式な招待客らしいよ。」

「それ、盛大なの?」

 学芸会のお姫様の衣装か? って雰囲気の衣装を見つつ、行きたくないかも・・・

「実は僕も初めてなんだよ。伊藤家のだろ。招待客は百人くらいいるらしいぜ。」

「ゲッ・・・、ねえ、この衣装、派手じゃない?」

「伊藤家だろ。むしろ地味なくらいだぞ。」とパパ。
 パパは葵先輩の家について知っているということ?






 部屋でママと着替えた。

「すごいドレスだねえ。」
「ウェディングドレスみたい。」

 ふわふわしていて、肩のところはヒモだけで、薄いショールを羽織るようになっていた。ママがショールをかわいく縫い付けてくれた。

「あなたのことだから、そんなショール、風に飛ばしちゃうか、忘れてくるのがオチよ。」とママ。

 うん、ワコもそう思う。

 膝丈よりもちょっと長くてとってもかわいいドレス。ママにポニーテールにしてもらい、髪飾りをつけてもらった。

「これ。」

 ママが金の細いネックレスを付けてくれた。

「パパが初めてのデートで買ってくれたものよ。安物じゃないわよ。」

 ママがワコの両肩に手を置いた。

「いい娘に育ったわ。」

 結婚式のときってこんな雰囲気になるのかなって思った。

「パパの実家が金持ちだってことは知ってるんでしょ?」

 どうかした? ママ?
 鏡伝いにママを見た。
 ちょっと涙ぐんでいた。

「私が、パパのご実家と、もう少しうまくやれれば・・・あなたに不自由な思いはさせなかったのに・・・」


「・・・ママ? ちっとも不自由なんてしてないよ? ワコは今のままで十分だよ?」


 本当だよ?
 どうしたの、ママ?
 今、ワコに不自由なものは何もないよ?


 ママは後ろから、心のこもったハグをしてくれた。

 ワコはパパとママみたいな、そんな夫婦になりたいの。

 ママがいつもパパに気を使っていて、パパはなんだかんだ言ってもワコよりもママが一番で。
 パパとママは、ワコの憧れなんだ(^^♪ 



「本当にいい娘に育って。広瀬君がワコに夢中になるのも分かるわ。」

 な、何を言うっ!!

「ちがうって!」

「分かってるって、あんたの好きなのは、高校の先生でしょ?」

「ちがーーーうっ!」

「隠しても無駄よ。あんたは小さいときから嘘は苦手なんだから。」

「絶対ちがーーーうっ!」

「いいじゃない、あんな格好いいんだし。告白しちゃえ〜!」

「ぜーーーったい、絶対、ちがーーーうっ!」






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