「おはよ、待った?」と私、鎌田ワコ。
「おはよ、大丈夫。」と祥子。
先日祥子と約束した映画、
メンバーには千尋と千歳も加わっていた。
祥子はずっと携帯メールを見ている。
だから携帯って嫌いだ。
「昨日のドラマ見た?」
「見た見た〜〜〜」というありふれた会話。
女子高生四人のデート。
女ばかりで虚しいといえばそうなんだけれど、女ばかりもいいもんだ。
どうせ混むからと朝一上映を狙っている。
「チケット、買っておいてくれたって。」と祥子が言う。
?
「誰が?」
「えへへ」顔がにやけているよ、祥子ちゃん。
映画館について驚いたのなんのって・・・
「よお、席、とっといた。」と村山君、祥子の彼氏。
祥子がにやける相手って村山君しかいないよな(^^ゞ
なーんて余裕ブッこいてる場合じゃなかった!!
町田と須田と、広瀬!!??
町田と須田、千歳と千尋はお互い承知だったらしい。
楽しそうに話し出した。
「ちょっ!」
慌てて祥子を引っ張ってロビーへ出た。
「仕組んだのね!」
「仕組んだって、そんな言い方しなくったっていいじゃない、クラスメイトで遊ぶののどこがいけないのよ。」
「私は四人だと思っていたから、」
「村山君たちとは会えたら会おうねってだけで、確約していたわけじゃないの、さっきからメールやりとりしていたの見ていたでしょ?今日の今日よ、決まったのは!!」
言い争っているところを後ろから肩に手をかけられた。
「俺、帰るから。鎌田は楽しんでこいよ。」
広瀬は本当にとっとと出口を出て行ってしまった。
再入場できないはずなのに・・・
「ワコのバカッ!!強情娘っ!!」
祥子は行っちゃった。
村山君のところに違いない。
取り残されちゃった・・・
ワコが悪いの・・・?
ワコが悪いんじゃないよ・・・
広瀬も誘うなんて、それはひどいよ・・・
映画・・・どうしよう・・・
上映時間ギリギリに入って一番後ろで立って一人で見た。
ワコと広瀬の分の席は空いたままだった。
あそこに二人で座れって?
冗談はやめてよね。
映画の泣けるところでボロボロと泣いた。
みんなが出てくる前に映画館を出て、トイレへ行って個室でずっと泣いた。
祥子と千歳と千尋の声がした。この映画館ってトイレはここだけなのか?
「ワコ、ちゃんと広瀬君に会えたかしらねえ。」
「知らないわよ、あんな強情娘。」
「でも無理矢理仕組んだも同然、」
「千歳までそんなこと言うの?広瀬君を誘えるかどうかは本当に今日まで分からなかったのよ。広瀬君、用事があったらしくって。でもメンバーにワコがいるって知って、すごく頑張って用事をなんとかしたみたいなのよ。それなのにワコのバカったら、」
「ワコにとっては余計なお世話だったんじゃないの?あの恐ろしいくらいの拒絶だもの、絶対中学で相当なことをされているのよ、そういうことも知らずに、」
「じゃあ私が悪いって言うの?だいたいあそこまで拒絶しなきゃならないことって、どんなことがあるのよっ!!」
「例えば、いじめられた、とか。」
「あたしもそれくらいしか想像がつかないのよ。」
あまり拒絶していると、色々想像させちゃうのか。
「毎朝毎朝、ワコは朝一で不機嫌だし、広瀬君は気まずい顔してるし、」
「まあまあ。六人で楽しもうよ。」
「うん、きっと今頃どこかで2人でいるよ。」
「どうかしらね。悪いけど私、村山君と別行動させてもらうわ。ムカツクし。」
「いいんじゃない?彼氏に甘えてきなよ。私たちはカラオケでも行く?」
「そうだね。須田君たちに聞いてみよう。」
洗面台で目の腫れを冷やした。
このまま家に帰るわけにもいかない。
今日はママもパパも家にいる。
早く帰れば、詮索はされないかもしれないけれど、何かあったってバレバレだ。
仕方なくて大きな本屋に行った。
あちこち見回って楽譜のコーナーにいた。
「友達と別れたの?」
!!!
彼が見ているのはベートーヴェンのソナタ集だ。もうそんなに弾けるのかな。
「少しは、仲良くしてくれないかな・・・」
「・・・・・・」
次はショパンのバラードだ。ショパンも弾けるの?
「映画、見そびれちゃったな。せっかくお金払ったのに。」
あ・・・、それってワコのせいなんだろうか・・・
「本当に、よかったら、なんだけれど、ケーキ、食べない?当然奢るよ?」
もうお昼はすぎたか。
「このまま帰ったら親がうるさそうでさ、夕方まで時間つぶしてるんだ。もし君もそうなら一緒に別々の時間をすごそうよ。」
一緒に別々の時間?
「一緒にいるだけ。僕、移動するから、おいしいケーキ屋さんを知りたかったらついてきて。無料フレッシュオレンジジュースと無料モンブラン付き。」
どおしよお。
広瀬、本当に楽譜を片付けて行っちゃう。
無料!!
ケーキ!!!
フレッシュオレンジジュース!!!!
もらわなきゃ損だっ!!!!!
広瀬から3mくらい後ろを歩く。
人が多いから見失わないように。
あれ、あれ、あれれ?
広瀬ぇ、足、速いよっ!!!
キョロ、キョロ、キョロロ!!!
「こっち」
「うわっ!!」
横から引っ張られた(^^ゞ
黙々とケーキを食べた。
「おいしい?」
声かけられてビクッとしちゃった。
うん、と黙って頷いた。
広瀬はコーヒーだけ頼んで店に置いてあるマンガを読んでいる。
もうお昼を食べたのかな。
その後広瀬の提案で、二人で映画を見直した。
もちろん広瀬の奢り。席は、前後にした。
でも今度は泣くのは我慢した。
「今日は付き合ってくれてありがとう。またね。」
「・・・ご馳走様でした!!」
頭を下げてダッシュした。
家に帰った広瀬君が、机の上に小銭をバラバラと落としながら、「危なかった(^^ゞ」と言ったのを、ワコは当然知らない(^^♪
カードは持ってる広瀬君だけれど、ワコの前で下手にカードを使い、「金持ち!」ともっと嫌悪されることは、避けたかった(^^ゞ 「腹減った!!」とは広瀬君。男は辛いね。
「おはよ、大丈夫。」と祥子。
先日祥子と約束した映画、
メンバーには千尋と千歳も加わっていた。
祥子はずっと携帯メールを見ている。
だから携帯って嫌いだ。
「昨日のドラマ見た?」
「見た見た〜〜〜」というありふれた会話。
女子高生四人のデート。
女ばかりで虚しいといえばそうなんだけれど、女ばかりもいいもんだ。
どうせ混むからと朝一上映を狙っている。
「チケット、買っておいてくれたって。」と祥子が言う。
?
「誰が?」
「えへへ」顔がにやけているよ、祥子ちゃん。
映画館について驚いたのなんのって・・・
「よお、席、とっといた。」と村山君、祥子の彼氏。
祥子がにやける相手って村山君しかいないよな(^^ゞ
なーんて余裕ブッこいてる場合じゃなかった!!
町田と須田と、広瀬!!??
町田と須田、千歳と千尋はお互い承知だったらしい。
楽しそうに話し出した。
「ちょっ!」
慌てて祥子を引っ張ってロビーへ出た。
「仕組んだのね!」
「仕組んだって、そんな言い方しなくったっていいじゃない、クラスメイトで遊ぶののどこがいけないのよ。」
「私は四人だと思っていたから、」
「村山君たちとは会えたら会おうねってだけで、確約していたわけじゃないの、さっきからメールやりとりしていたの見ていたでしょ?今日の今日よ、決まったのは!!」
言い争っているところを後ろから肩に手をかけられた。
「俺、帰るから。鎌田は楽しんでこいよ。」
広瀬は本当にとっとと出口を出て行ってしまった。
再入場できないはずなのに・・・
「ワコのバカッ!!強情娘っ!!」
祥子は行っちゃった。
村山君のところに違いない。
取り残されちゃった・・・
ワコが悪いの・・・?
ワコが悪いんじゃないよ・・・
広瀬も誘うなんて、それはひどいよ・・・
映画・・・どうしよう・・・
上映時間ギリギリに入って一番後ろで立って一人で見た。
ワコと広瀬の分の席は空いたままだった。
あそこに二人で座れって?
冗談はやめてよね。
映画の泣けるところでボロボロと泣いた。
みんなが出てくる前に映画館を出て、トイレへ行って個室でずっと泣いた。
祥子と千歳と千尋の声がした。この映画館ってトイレはここだけなのか?
「ワコ、ちゃんと広瀬君に会えたかしらねえ。」
「知らないわよ、あんな強情娘。」
「でも無理矢理仕組んだも同然、」
「千歳までそんなこと言うの?広瀬君を誘えるかどうかは本当に今日まで分からなかったのよ。広瀬君、用事があったらしくって。でもメンバーにワコがいるって知って、すごく頑張って用事をなんとかしたみたいなのよ。それなのにワコのバカったら、」
「ワコにとっては余計なお世話だったんじゃないの?あの恐ろしいくらいの拒絶だもの、絶対中学で相当なことをされているのよ、そういうことも知らずに、」
「じゃあ私が悪いって言うの?だいたいあそこまで拒絶しなきゃならないことって、どんなことがあるのよっ!!」
「例えば、いじめられた、とか。」
「あたしもそれくらいしか想像がつかないのよ。」
あまり拒絶していると、色々想像させちゃうのか。
「毎朝毎朝、ワコは朝一で不機嫌だし、広瀬君は気まずい顔してるし、」
「まあまあ。六人で楽しもうよ。」
「うん、きっと今頃どこかで2人でいるよ。」
「どうかしらね。悪いけど私、村山君と別行動させてもらうわ。ムカツクし。」
「いいんじゃない?彼氏に甘えてきなよ。私たちはカラオケでも行く?」
「そうだね。須田君たちに聞いてみよう。」
洗面台で目の腫れを冷やした。
このまま家に帰るわけにもいかない。
今日はママもパパも家にいる。
早く帰れば、詮索はされないかもしれないけれど、何かあったってバレバレだ。
仕方なくて大きな本屋に行った。
あちこち見回って楽譜のコーナーにいた。
「友達と別れたの?」
!!!
彼が見ているのはベートーヴェンのソナタ集だ。もうそんなに弾けるのかな。
「少しは、仲良くしてくれないかな・・・」
「・・・・・・」
次はショパンのバラードだ。ショパンも弾けるの?
「映画、見そびれちゃったな。せっかくお金払ったのに。」
あ・・・、それってワコのせいなんだろうか・・・
「本当に、よかったら、なんだけれど、ケーキ、食べない?当然奢るよ?」
もうお昼はすぎたか。
「このまま帰ったら親がうるさそうでさ、夕方まで時間つぶしてるんだ。もし君もそうなら一緒に別々の時間をすごそうよ。」
一緒に別々の時間?
「一緒にいるだけ。僕、移動するから、おいしいケーキ屋さんを知りたかったらついてきて。無料フレッシュオレンジジュースと無料モンブラン付き。」
どおしよお。
広瀬、本当に楽譜を片付けて行っちゃう。
無料!!
ケーキ!!!
フレッシュオレンジジュース!!!!
もらわなきゃ損だっ!!!!!
広瀬から3mくらい後ろを歩く。
人が多いから見失わないように。
あれ、あれ、あれれ?
広瀬ぇ、足、速いよっ!!!
キョロ、キョロ、キョロロ!!!
「こっち」
「うわっ!!」
横から引っ張られた(^^ゞ
黙々とケーキを食べた。
「おいしい?」
声かけられてビクッとしちゃった。
うん、と黙って頷いた。
広瀬はコーヒーだけ頼んで店に置いてあるマンガを読んでいる。
もうお昼を食べたのかな。
その後広瀬の提案で、二人で映画を見直した。
もちろん広瀬の奢り。席は、前後にした。
でも今度は泣くのは我慢した。
「今日は付き合ってくれてありがとう。またね。」
「・・・ご馳走様でした!!」
頭を下げてダッシュした。
家に帰った広瀬君が、机の上に小銭をバラバラと落としながら、「危なかった(^^ゞ」と言ったのを、ワコは当然知らない(^^♪
カードは持ってる広瀬君だけれど、ワコの前で下手にカードを使い、「金持ち!」ともっと嫌悪されることは、避けたかった(^^ゞ 「腹減った!!」とは広瀬君。男は辛いね。
「ん?」
「あ、起こしちゃった?」
やっぱり来たっ!!
すでに部屋にいたし。
一応年頃の娘なんですがっ!黙って入るなよっ!!!
「おはよう。」
「お、おはようございます。」
ついつい挨拶しちゃったけれど・・・
先生、何してるの?
イスに座ってワコの机に向かっている。
「コンピューター、目覚まし代わり?」
ああ、確かにアラームで起動させてる。
そういえば昨日はどうしたっけ?
先生はちょうどコンピューターを終了させてくれたところだった。
起きようとしたおでこを押さえられた。
「ダメ、ゆっくり起きなきゃ。」
驚いて先生をマジマジと見ちゃったら、手のひらで目まで覆われた。
「まだ寝てなよ。俺は仕事があってどうしても朝しか顔を見にこられなかったんだ。今日はお刺身を届けさせるからね。早くよくなってね。」
「・・・」 目を覆われた手が温かい。
「本当にごめんね。ケガさせる気なんかなかったのに・・・まだ寝ていて。」
「・・・」 ふわっとのってる手のひら。
「本当にごめん」
心臓の音、マックス!!!
なんで?
んなことより、この音、センセに聞こえてないよね???
先生がもう片方の手で、ワコのケガしたところの髪の毛を持ち上げた。
うわ、ダメだよ、センセ・・・
ワコ、心臓破裂しちゃう・・・
包帯からはみ出ている、剃られたところを指で撫でてる。
うわあ、ど、どしよ・・・
「か、髪なんてすぐに伸びるよ・・・」
縫うときに剃られたから・・・
「長い髪、自慢なんだろ? あんなに抵抗して・・・」
本当にいつくしむように撫でてくれる。
なんとなく覚えている。
髪を剃られるのをものすごく抵抗していた。
その後の記憶がない。
「俺のせいだ・・・」
なんて言おう・・・
確かにセンセのせいかもしれないけれど・・・
殴られるような原因を作ったのはワコなのだ・・・
そもそもマンガなんか、見つかるから・・・
読んでたから・・・
持ってたから・・・
学校なんかに持っていったから・・・
「じ、自慢できるもんなんて、髪くらいしかなくて・・・」
あたし、何言ってるんだろ・・・
思いと口は絶対に別々に動いている。
だって今あたしの全神経は、センセの指だもの。
剃られたところを、後悔するように撫でているセンセの指。
「そんなことないよ」
へ?
「い、いいよ・・・気なんて使わなくって・・・」
あ、ダメ・・・何、しゃべってんだろ・・・
「髪伸ばしてないとさ、男の子と間違えられちゃうよ。胸、ないし・・・」
「そんなこと、思ってるの?君は十分かわいいのに。」
か、かわいい!!!???
あ・・・あかん・・・
あ・・・あかんて・・・
自分の心臓の音が大きくて・・・
あ、もっとあかん・・・
センセが近づいた気がする・・・
だって左の頭のへんが、温かい、感じが、近づいてきて・・・
「早く治って。」
「・・・」 ドクドクドクドク
なんか・・・
キス・・・
だった???
「どうかした?顔、赤いよ?熱?」
「へ?」
ね、熱・・・?
慌てて先生の手を退けようとしたら、
先生はワコが動かすままに手を動かしてくれる。
今、先生の手はワコの思いのまま?
目が合ってしまって、どうしていいか分かんなくって、
だから、もう一度、自分でワコの目の上に、
先生の手を、戻した。
「その傷、どしたの?」
口の横が切れてて、頬が青くなってて・・・
「多方面から殴られた。特に君のパパにはやられたよ。」
パ、パパ・・・
「ご、ごめん・・・」
「なんで君が謝るのさ。悪いのは俺なのに。」
いや、でも・・・
「君を嫁さんにもらうのは、苦労しそうだな。」
あ・・・あたし、もらわれるんですか?
あなた・・・に?
「部屋、片付けたの?」
「ん・・・うん。汚いとこ、見ちゃったんでしょ?」
「見た。」
先生が笑った、と思った。だから目の覆いを外した。
「もう行かないといけない。」
「デート?」
にやッとして聞いた。
「仕事。」
先生はドッと疲れたような顔になった。
「補習か何かなの?」
「また詳しく話せるよ。他の人には黙っておいてね。面倒だから。」
先生はもう一度「早く治れ」と頭を撫でて帰っていった。
なんつーか、とろけたーーー♪ヾ(≧▽≦)ノ彡☆!
夜、お刺身が届いた。どう見ても食べきれない。
「だから先に断れって言っただろ。」
どう見たって十人前だ。
刺身パーティーしろってか。
「ワコ、明日お前の先生に、我が家は三人家族で食べ盛りの男の子はいないと、きつーく言っておけ。でないと、これからもちょくちょくこういう目に合うぞ。」
はい、言っておきます、心して。
「あ、起こしちゃった?」
やっぱり来たっ!!
すでに部屋にいたし。
一応年頃の娘なんですがっ!黙って入るなよっ!!!
「おはよう。」
「お、おはようございます。」
ついつい挨拶しちゃったけれど・・・
先生、何してるの?
イスに座ってワコの机に向かっている。
「コンピューター、目覚まし代わり?」
ああ、確かにアラームで起動させてる。
そういえば昨日はどうしたっけ?
先生はちょうどコンピューターを終了させてくれたところだった。
起きようとしたおでこを押さえられた。
「ダメ、ゆっくり起きなきゃ。」
驚いて先生をマジマジと見ちゃったら、手のひらで目まで覆われた。
「まだ寝てなよ。俺は仕事があってどうしても朝しか顔を見にこられなかったんだ。今日はお刺身を届けさせるからね。早くよくなってね。」
「・・・」 目を覆われた手が温かい。
「本当にごめんね。ケガさせる気なんかなかったのに・・・まだ寝ていて。」
「・・・」 ふわっとのってる手のひら。
「本当にごめん」
心臓の音、マックス!!!
なんで?
んなことより、この音、センセに聞こえてないよね???
先生がもう片方の手で、ワコのケガしたところの髪の毛を持ち上げた。
うわ、ダメだよ、センセ・・・
ワコ、心臓破裂しちゃう・・・
包帯からはみ出ている、剃られたところを指で撫でてる。
うわあ、ど、どしよ・・・
「か、髪なんてすぐに伸びるよ・・・」
縫うときに剃られたから・・・
「長い髪、自慢なんだろ? あんなに抵抗して・・・」
本当にいつくしむように撫でてくれる。
なんとなく覚えている。
髪を剃られるのをものすごく抵抗していた。
その後の記憶がない。
「俺のせいだ・・・」
なんて言おう・・・
確かにセンセのせいかもしれないけれど・・・
殴られるような原因を作ったのはワコなのだ・・・
そもそもマンガなんか、見つかるから・・・
読んでたから・・・
持ってたから・・・
学校なんかに持っていったから・・・
「じ、自慢できるもんなんて、髪くらいしかなくて・・・」
あたし、何言ってるんだろ・・・
思いと口は絶対に別々に動いている。
だって今あたしの全神経は、センセの指だもの。
剃られたところを、後悔するように撫でているセンセの指。
「そんなことないよ」
へ?
「い、いいよ・・・気なんて使わなくって・・・」
あ、ダメ・・・何、しゃべってんだろ・・・
「髪伸ばしてないとさ、男の子と間違えられちゃうよ。胸、ないし・・・」
「そんなこと、思ってるの?君は十分かわいいのに。」
か、かわいい!!!???
あ・・・あかん・・・
あ・・・あかんて・・・
自分の心臓の音が大きくて・・・
あ、もっとあかん・・・
センセが近づいた気がする・・・
だって左の頭のへんが、温かい、感じが、近づいてきて・・・
「早く治って。」
「・・・」 ドクドクドクドク
なんか・・・
キス・・・
だった???
「どうかした?顔、赤いよ?熱?」
「へ?」
ね、熱・・・?
慌てて先生の手を退けようとしたら、
先生はワコが動かすままに手を動かしてくれる。
今、先生の手はワコの思いのまま?
目が合ってしまって、どうしていいか分かんなくって、
だから、もう一度、自分でワコの目の上に、
先生の手を、戻した。
「その傷、どしたの?」
口の横が切れてて、頬が青くなってて・・・
「多方面から殴られた。特に君のパパにはやられたよ。」
パ、パパ・・・
「ご、ごめん・・・」
「なんで君が謝るのさ。悪いのは俺なのに。」
いや、でも・・・
「君を嫁さんにもらうのは、苦労しそうだな。」
あ・・・あたし、もらわれるんですか?
あなた・・・に?
「部屋、片付けたの?」
「ん・・・うん。汚いとこ、見ちゃったんでしょ?」
「見た。」
先生が笑った、と思った。だから目の覆いを外した。
「もう行かないといけない。」
「デート?」
にやッとして聞いた。
「仕事。」
先生はドッと疲れたような顔になった。
「補習か何かなの?」
「また詳しく話せるよ。他の人には黙っておいてね。面倒だから。」
先生はもう一度「早く治れ」と頭を撫でて帰っていった。
なんつーか、とろけたーーー♪ヾ(≧▽≦)ノ彡☆!
夜、お刺身が届いた。どう見ても食べきれない。
「だから先に断れって言っただろ。」
どう見たって十人前だ。
刺身パーティーしろってか。
「ワコ、明日お前の先生に、我が家は三人家族で食べ盛りの男の子はいないと、きつーく言っておけ。でないと、これからもちょくちょくこういう目に合うぞ。」
はい、言っておきます、心して。
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