センセ、絶好調!!   (小説です(^^ゞ)

ありえんて
 ワコは今さら『源氏物語』にはまっている。

 もちろん原作ではなくて葵先輩が貸してくれた漫画。

 源氏の最初の奥さんが『葵』というのも気に入っている。

 だって先輩と同じ名前だもん。

 源氏の中の葵も、葵先輩もお嬢様で取っ付き難いところが似ているかな。




 ストーリーは・・・エロイんだね(;´▽`A``




 世界的に有名な『源氏物語』が恋愛小説だったとは知らなかった。

 特に源氏が小さいときから可愛がっている紫の上に初体験させちゃうシーンなんてドキドキしちゃった。

 もちろんそういうシーンかしっかりと描かれているわけではないんだけれど、ワコと同じ年の子だって知っている子は知っているのだろうし、漫画の中で紫の上は「次の正月で十五だ」と言っているから、初体験十四でしょ。

 昔だから結婚は早かったとしても、自分が今十五だということを重ね合わせるとドキドキしてしまう。

 相手は誰がいいかなあとか、紫の上みたいに信じている人から裏切られるような形でなんて最悪だって思ってみたり。

 紫の上はコトの後、とっても機嫌を悪くしてしまうのだけれど、

 コトってコトだよねえ・・・???



 そんなに嫌なことなの(^^ゞ???



 ワコ、知らないんだけれど・・・(^^ゞ???



 でも何よりも相手なんていないし。
 一番身近な男子って広瀬
 年齢的に源氏の君とは重ならない。

 年齢的に?かなり年上。

 シェル?ありえんっ!ありえんって(^^ゞ






やっちまった
 木曜日の一時間目はいつもなら寝ている数学。

 おじいさん先生で言っていることも分からないし、
 もともと数学で受験する気もないし、
 実力もないし(^^ゞ

 引き出しの中に漫画を隠して読み始めたら、ついつい集中してしまった。
 後頭部に衝撃を感じ、今が数学の時間であることを思い出した。

 漫画はあっさり取り上げられた。


 やっちまった・・・。


「珍しく寝ていないと思ったら、漫画ですか。フォッ、フォッ、フォッ。」



 仙人かいな、という笑い方をして漫画を手に去っていく。



 数学の先生は温和でその場でワコのことを怒りはしなかったけれど、

 授業後ついていらっしゃいと言われ導かれたのは当然職員室で、

 担任の目の前でワコに漫画を「はい」と返してくれた。



 ワコにできたことといえば小さくなることくらいで、

「すみません!」と慌てて謝ってくれたのは担任だった。



「バカ、あんな優しい先生の授業で何やってんだよ!」

「すみません、つい・・・」



 何も担任に返さんでもいいやん。



「どうかしましたか?」



 担任が持っていた漫画を慌てて隠した。校内一厳しい生活指導の先生が来たからだ。



「いえ、なんでもありません!」



 生活指導の先生はワコの頭を軽く小突くと仕方ないなという顔をして通り過ぎてくれた。



 ホッ。先生、ゴメン、ありがと。

「放課後、取りに来い。」



 は〜〜〜い(>_<)






シェルのつぶやき
シェルの独り言



 とにかく、あいつの言葉をなんとかしないと・・・

 丁寧な言葉は使えるらしい。

 腐っても百瀬学園の出身だ。

 通ったのが3年だとしても、

 丁寧な言葉も振舞いも身についていないわけがない。

 事実、校長の前ではそこそこの振る舞いだった。



 校長には出来て、俺には出来ない、

 というより、校長にしか出来ない?

 矢部にもひどい口調だし。



 とにかく・・・

 俺に対する態度をなんとかしたい。

 一発ぶん殴る!!!

 が一番早いけれど・・・

 おじさんに殺される・・・







イヤな予感
 慌てて教室に戻るともう英語は始まっていた。

 ゲッ、そういえば漢字テストの勉強するのをすっかり忘れてた。

 どーーしよーーー、これでまた内職見つかったらヤバすぎ。

 でも漢字テストの勉強、まったくしていない。

 0点もヤバすぎ。また100回書かされる。

 そんなことより問題集持ってきたっけ。こそこそと鞄の中を見た。



 あったーーーー(*^_^*)



 適当に漢字を英語のノートに書き出した。

 ヨッシャ、これだけでも覚えよう。ひょっとしたら当てずっぽうが当たるかも。



「鎌田さん、珍しく真剣に、何をやっているのかと思えば。」



 ガバッと机に突っ伏した、けど遅かった・・・。



 英語の先生にも放課後の呼び出しを喰らった。

 今日はついていないらしい。

 で、ついでに漢字テストはヤマが当たって4点は取れたんだけれど、当然居残り。




「鎌田さん、木曜の放課後って2−8との話し合いがあるの、覚えてる?」

「あーーーーーー!」



 私ってすでにボケが始まった?

 担任にマンガ取り返しにいって、英語の先生のところへ行って、漢字やって、2年8組・・・。

 体が四つ欲しいよ(´Д`|||)




 六時間目のホームルームはなんとシェルが来た。



 すごくイヤな予感がする・・・





厄日です
「矢部先生、今日の午後、出張だったの忘れてたって。」

 矢部先生らしいや。





 学校祭は2−8から『赤毛のアン』でいいと言ってきた。これでジュリエットの心配はなくなった。

 そんなもんだよ、広瀬君。



 議題は『赤毛のアン』で台本を書く人を選んでくれ、というものだった。

 真っ先に名前があがったのがワコだった。何故なんだいっ!



「鎌田、どう?」とはシェル。

「無理。不可能。」

「なんで?」とは佐藤君。



「だって今日の放課後4つも用事があるんだもん。それ、今日からでしょ。」



「4つの用事って、今日だけのこと?」




 しつこい・・・




「あのさあ、木曜日は漢字の、」


「だから受かればいいじゃん。」と町田。



 うっさいっ( ̄。 ̄)!



「ムリ。」

 みんなの視線の先はシェル。先生がため息をついてる。

「お前ってさあ、勉強すればいいのに。」

 町田だ。うるさいわい!



「漢字は別格よぉぉ、小学校の時からずーーーーーっと不合格なんだから。漢字のテストを一発で受かるって、私にとって天変地異も同然なのよっ!」



「分かったから。できないことを自慢しなくていいから。」



 クスクスクス・・・


 ムッ(−−〆)



「でも1−8の代表の一人にはしておいていいんでしょ?」

「今日行かなくていい?」

「英語と数学の呼び出しなんでしょ?」

「ん?担任の呼び出しにチェンジしている。」

「あ、だから、預かってる。」とシェル。




「え!」






蛇に睨まれた蛙
 思わず息を吸い込んでしまった。

 マンガ、シェルが持ってるってこと???

 最悪すぎる・・・

 冷や汗が出る。




「バッカだなあ。これ以上、甲斐先生に叱られる理由作ってどうすんの。」と町田。

「鎌田、英語もなんかやったわけ?」

「やってません!」

「ウソじゃん、何か内職していて、放課後来いって言われてたじゃん。」


 っバカッ!

 町田を睨みつけながらもすでに涙目。
 町田はニヤついてるし。


 結局台本からはワコは外してもらって、今日は行かなくてもいいことにしてもらった。













 放課後。

「鎌田、アンをやってもいいの?」

「へ?」

「だいたい『赤毛のアン』という演目が出た経緯は覚えているだろ。『アン』のイメージは君なんだぞ。」



 お前という言葉を使わないようにしてくれている。やっぱり言い過ぎたな。



「主役は二年生だよ。」

「あのね、言いたかないけど」

「だったら言わないでっ!」

「ほんと、ケンカばっかだね。」



 タイミング悪すぎ( ̄_ ̄|||)



「鎌田、漢字、やるよ。」

「英語の呼び出しを先にすませてきます。」



 シェルがえらく睨んでる。

 当たり前か・・・

 蛇に睨まれた蛙ってこの事だ。

 ほんとーーに身動き取れない、トホホ・・・。



「せいぜい怒られてこい。」



 ひどくない(´Д`|||) ?






死刑執行です
 それにしても悪すぎる。

 悪すぎるどころか最悪だ。

 シェルがマンガを持っている・・・。

 さすがに今までマンガを取り上げられた経験はない。

 それはやばいもの(´Д`|||)

 中学でもお菓子とマンガは別格で怒られていたもの(´Д`|||)



 英語の先生には睨み付けられてプリントを三枚渡された。

 英語の先生に睨まれたって、そんなには怖くないのに、

 どうしてシェルだとあんなに怖いのかな。



 漢字の再試、どうして8組でやるんだよ・・・って副担だからだろうけど・・・

 自分の教室に入るのが躊躇われるって嫌だよなあ・・・



「先生・・・」

「おかえり・・・( ̄。 ̄)」

「あの・・・」

「みんなの前で怒られるのが嫌なら先に漢字を終わらせろ( ̄。 ̄)」



 あーあ、不機嫌この上ない。

 みんなの前で怒られるなんて当然イヤだ。

 漢字を先にやるけれど、でもこの後にどんな地獄が待っているのかと思うと全く頭に入らないっス。


 弱いワコ・・・(´Д`|||)


「早く覚えろよ( ̄。 ̄)」


 上から響く先生の声が怒っている。

 当たり前だよな。

 マンガだもんな。

 仕方ないから頑張っているフリはした。

 そうこうしているうちに居残りはやっぱりワコだけになったし。



「ほら、行くよ!!」



 いつもなら逆らうところだけれど、今日はそんな気にもならない。

 死刑執行だあ。


 資料室にはもっと最悪なことに担任が矢部先生と楽しそうにしゃべっていた。






お尻叩き?
「今日、すまなかったね、俺、出張のことをすっかり忘れていた。」と担任。

「別にいいけど。これ、まだ返してないよ。漢字テストを先にやらせている。どうする?返す?」

「え?返さないつもりだったの?」

 担任が驚いている。シェルだったら返さないなんて普通だってば。

「返してもいいけれど、それ相当のペナルティは必要でしょ。マンガだよ。」

「ゲームやメールじゃないんだし、そんなに脅さなくたって。」


「甘いっ!
ゲームやメールなら、即退学にしてやる。」



 そんなあ(´Д`|||)


 怒鳴りつけられて一番驚いたのは担任みたいだ。


「まあまあ。三人の教師に囲まれている鎌田の身にもなってやれって。すっかり怯えちゃってるじゃん。今回は珍しく最初から反省しているみたいだし。」


 矢部先生の助け舟だ。ありがたい。


「怒られるようなことをしたのはこいつだ。」

「そりゃ、そうだけれどさ、執行猶予くらいつけてやれよ。」

「残念だけれど、初犯じゃないんだよね。枝毛切り、遅刻、カンニング。」

「全部些細なことじゃないか。」

「悪の芽は早く摘み取る。」


「悪の芽って、万引きしたわけじゃない。」



「万引きなんかしたら、ぶっ殺す。」



 (^^ゞ
 (>_<)
 (-.-)




「お前って鎌田のことになると、どうも厳しいよねえ。」


 矢部先生がため息混じりだ。
 甲斐先生は矢部先生を無視することにしたらしい。


「こんなのどう?三回まわってワンって言う。」

 甲斐先生がワンワンって吠えている。

 はあ?
 目点・・・

 甲斐先生を呆然と見つめてしまった。


「すっごく趣味悪い。」

「じゃ、こしょぐりの刑。」

「そんなことしたらやばいでしょ。鎌田は年頃の女の子なんだから。」

「あ、お尻叩きだ。学校での体罰って言ったらそれだろ。ほれほれ、ケツ見せろ!」

「キャッ!」

 甲斐先生が本当にワコのスカートをめくろうとしたから、担任がシェルの手をビシッと叩いた。

「アホか!」



 (-.-)
 (>_<)
 (-.-)







お相手しましょうか?
「お前、頭、大丈夫か?」

 矢部先生が冷たい目でシェルを見ている。

「二人はいつもここでこんな会話してるわけ?」

 とりあえず、こしょぐるだの、お尻叩き だのって話しはなくなったらしい、ホッ(^^ゞ


 担任が呆れ顔だし。
 ワコはどんな顔すればいいのかなあ。
 こんな雑談に付き合うくらいなら、さっさと漢字を済ませちゃいたい。


「じゃ、『源氏物語』の感想を述べてもらおう。」

「何、それ。」

「このマンガ、『源氏物語』なんだよ。さっき読んだけれど、驚いたよ。」

 シェルが驚いたというページを広げて矢部先生に見せている。

 あのシーンっすか?

「へ・・・え・・・源氏ってエロイとは知っていたけれど、へえ・・・今の子ってこういうのを読むんだ。」


 今のマンガでもないんだたけれど・・・
 自分が十分の一くらいに縮んだ気がした。
 矢部先生は担任にマンガを渡している。担任は後ろでどんな顔してるんだろ。


「これ、おもしろかった?」

「あ、いや・・・」

「おもしろかったんだよね。学校へまで持ってきて読むくらいだから。」

「登場人物が多くて、難しいし、借りたもんだから早く返したかったし・・・」

「誰のなの?」

「いや、その・・・」

「鎌田はチクるようなことしないよ。」


 シェルが矢部先生を睨む。


「源氏のことは好き?」

「あ、ん?」

「こういうこと、したい?」

 こういうこと?


「なんならお相手しましょうか?」


 へ?つまり、その男女の(〃゚д゚;A???





口止め
 目がまん丸になっちゃった。


 と同時に担任がシェルに殴りかかった???


 ドンという鈍い音がしたけれど、


 瞬間にワコは矢部センセに目隠しされて、


 すんごい力で廊下に引っ張り出された。



「ちょっ・・・」と何か、あったよねえ???



「鎌田さん、確か、ワコちゃん、だったよねえ?

 いい子だね〜〜〜。」




『俺の生徒に手を出すな!』

『んの野郎!!!』



「ちょっ」と・・・??



 同時に耳までふさがれて、



「階段だよ〜〜〜、気をつけて〜〜〜」



 つまり、口止めしたい???



 1階にたどりついたら矢部先生が目と耳の手を退けてくれた。



「いい子だから、何もかも忘れて帰ってね」


「・・・センセ・・・」


「ん?」明らかに、聞くな! という顔。


「・・・ワコのカバン・・・」


 矢部先生はゴメン、ゴメンと二階へ戻っていった。






「分かるよね、ワコちゃん?黙って帰ってくれるよね?」

「え、あ、でも・・・私のせい・・・」

「気にしない、気にしない、全部忘れて。じゃ、ね。また明日。」



「は・・・あ・・・」




 どうしよう。

 矢部先生は帰れというジェスチャーをしきりにする。





 帰ってきちゃったけれど本当によかったのかな。

 漢字、途中だったのに。

 明日行ってみよう。





 シェルに会いに行けるように漢字を覚えて『魔笛』をたくさん訳した。






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